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五輪銀メダリスト・木俣椋真はボートレーサーとして成功するか 異色転身組「野田昇吾」「計盛光」のその後から読み解く

by テイモン編集部選手分析
五輪銀メダリスト・木俣椋真はボートレーサーとして成功するか 異色転身組「野田昇吾」「計盛光」のその後から読み解く

スノーボード男子ビッグエアで2月のミラノ・コルティナ五輪銀メダルを獲得した木俣椋真選手(23)が、ボートレーサーへの転身を目指していることを明らかにしました。全日本スキー連盟には強化指定の辞退を伝えてスノーボードを引退し、応募資格である体重57キロ以下に向けて減量を開始。特別試験に合格すれば2027年4月に養成所へ入所し、2028年4月のデビューを目指すといいます。

五輪メダリストのボートレーサー転身は史上初。ただし、プロやトップクラスの実績を持つアスリートが引退後にボートレーサーへ転じるケース自体は、実はこれが初めてではありません。

今回は、木俣選手と同じ「特別試験」枠を経て転身した2人の先輩レーサー、元プロ野球選手・野田昇吾選手と、元アーティスティックスイミング日本代表・計盛光選手を取り上げ、転身後のキャリアをデータで振り返ります。そのうえで、木俣選手がこの2人のどちらに近いタイプなのかを考えてみます。


「特別試験」とは何か

ボートレーサー養成所の入所試験には3種類あります。

  • 一般試験:年齢・身長・体重などの基本条件を満たせば誰でも受験可能
  • スポーツ推薦試験:中学・高校・大学等でのスポーツ実績を持つ人向け
  • 特別試験:日本代表クラスの実績を持つトップアスリートを対象とした試験枠(2008年新設)

いずれの試験を経ても、応募資格である「身長175cm以下・体重57kg以下(男子は49kg以上)」はクリアする必要があります。木俣選手が現在取り組んでいる減量は、この基準をクリアするためのものです。

過去に特別試験を経てデビューしたトップアスリート出身レーサーの代表格が、野田昇吾選手と計盛光選手です。


野田昇吾(5259)——プロ野球からの転身、23kg減量を経て

野田選手は福岡県糸島市出身。鹿児島実業高、社会人野球を経て2015年ドラフト3位で埼玉西武ライオンズに入団した左投げ投手です。現役時代は身長167cm・体重71kg。中継ぎとして5年間プレーし、2017年にはアジアプロ野球チャンピオンシップの日本代表にも選出されました。2020年11月に戦力外通告を受け、同年12月に現役引退。2021年7月に特別試験に合格し、養成基準体重をクリアするため約20kgの減量を行いました。

2022年9月に養成所を卒業し、同年11月に戸田競艇場でデビュー。プロ野球選手からの転身は、1947年に阪急ブレーブスに入団した早瀬薫平以来という、実に70年以上ぶりの出来事でした。

デビュー後の成績推移

級別 出走 1着 勝率 優出 優勝
23前期 B2 73 0 1.41 0 0
23後期 B2 68 1 1.85 0 0
24前期 B1 84 1 2.17 0 0
24後期 B1 91 1 2.31 0 0
25前期 B1 108 3 2.73 0 0
25後期 B1 105 7 3.43 0 0
26前期 B2(降格) 40 2 3.03 0 0

デビュー当初は勝率1.41〜1.85と苦しいスタートでしたが、期を重ねるごとに数字を伸ばし、25後期には自己最高の勝率3.43を記録。1着数も7回に達し、B1級で戦えるだけの地力を見せました。ただし26前期は出走数が40走にとどまり、B2へ降格。デビューから約4年、優出・優勝はまだなく、地道にキャリアを積み上げている段階です。

投手というパワー・反射神経型の競技から、繊細な操舵感覚が問われるボートレースへの転向は、体格面(20kg超の減量)でも技術面でも大きな断絶があったと言えます。それでも着実に勝率を上げてきた点は、地力の証明といえるでしょう。


計盛光(5021)——シンクロ日本代表からの転身、その後の長期休養

計盛選手は大阪府出身。小学2年からアーティスティックスイミング(シンクロ)を始め、日本代表にも選ばれて世界選手権に出場した経歴を持ちます(五輪出場経験はなし)。大学卒業を機に競技を離れ、身長158cmという小柄さとモータースポーツへの関心から、特別試験を経てボートレーサーの道へ。2018年5月に住之江競艇場でデビューしました。

デビュー後の成績推移

級別 出走 1着 勝率 優出 優勝
18前期 B2 0 0 0.00 0 0
18後期 B2 59 0 1.34 0 0
19前期 B2 85 0 1.39 0 0
19後期 B1 87 1 2.02 0 0
20前期 B2 65 0 1.85 0 0
20後期 B1 69 4 2.54 0 0
21前期 B1 80 4 2.70 0 0
21後期 B2 33 1 2.45 0 0
22前期〜24前期 B2 0 0 0.00 0 0

キャリア初期はB2級で勝率1〜2台に苦しみながらも、19後期・20後期・21前期にB1昇格を果たし、自己最高の勝率2.70まで数字を伸ばしました。しかし21後期に再びB2へ降格すると、22前期以降は5期連続で出走ゼロが続き、2024年6月に現役を退きました。優出・優勝はキャリアを通じて一度もなく、生涯獲得賞金は約1945万円でした。


木俣椋真はどちらに近いのか

木俣選手を2人の先輩と比較すると、いくつかの軸で立ち位置が見えてきます。

野田昇吾 計盛光 木俣椋真
出身競技 プロ野球(団体・パワー系) アーティスティックスイミング(個人・採点系) スノーボード(個人・採点系)
実績レベル プロ/日本代表(アジア大会) 日本代表(世界選手権出場、五輪経験なし) 五輪メダリスト
転身時の身体的ハードル 167cm・71kgから20kg超の減量 158cmと小柄で好条件 170cmから57kg以下への減量
転身後 現役(B2級、デビュー約4年) 引退(B1到達も後に降格・休養) 未デビュー(2028年目標)

競技実績のレベルで見れば、木俣選手は五輪メダリストとして2人を上回る、史上最高峰の実績を引っさげての転身です。一方で、体格面のハードルという点では、身長170cmから体重57キロ以下まで絞り込む必要がある木俣選手の状況は、158cmと元々小柄だった計盛選手よりも、167cmから20kg超を落とした野田選手のケースに近いといえます。

また、採点競技における「精密な技術と一発の集中力」を武器にしてきた点は、団体・パワー系競技出身の野田選手よりも、個人の採点競技出身である計盛選手との共通点が多いように見えます。

そのうえでデータが示す事実として重要なのは、野田選手・計盛選手ともに、プロ/日本代表レベルの実績を持ちながら、ボートレーサーとしては勝率2〜3台での苦戦が続き、優出・優勝には一度も届いていないという点です。ボートレースが求められるのは体力や瞬発力だけでなく、機力の見極めやスタートタイミング、水面ごとの旋回感覚といった、養成所入所後にゼロから積み上げる専門技術であることを、2人のキャリアは物語っています。

木俣選手がどこまで戦えるようになるかは、2028年のデビュー以降、実際のレース内容を見なければ分かりません。ただ、五輪メダリストという看板だけでなく、養成所でどれだけ専門技術を積み上げられるかが、成否を分ける鍵になりそうです。今後の動向にも注目していきます。

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