スポーツ推薦の選手は活躍する？ボートレーサー養成所の厳しい世界

若手のボートレーサーのインタビューなどを見ていると、ボートレース養成所に入る前に他のスポーツをやっていたという話が結構出てきます。

珍しい競技だと4825 倉持莉々選手の水球などが有名でしょうか。
いつからかはわからないのですが、ボートレーサー養成所の募集にはスポーツ推薦があり、そのため他のスポーツ経験者が多いのかもしれません。

ではスポーツ推薦出身の選手って活躍できているの？と、ふと疑問に思ったので調べてみました。

養成所の公式サイトに募集要項などが出ているのですが、そのサイトの「お知らせ」に各期の入所した養成員の一覧が掲載されています。備考欄にスポーツ推薦の情報や親兄弟がボートレーサーなどの情報も載っています。

117期入所まで遡れたので、ここからわかる情報をまとめてみたら、厳しい現実がわかりました。

https://www.boatrace.jp/yamato/

www.boatrace.jp

養成所に入ってもボートレーサーになれない養成員も多い

ボートレース養成所は半年に一度入所式があるのですが、一度に入所する人数は最近はだいたい50人前後。そこから1年間の訓練を経て、卒業するとボートレーサーとなります。

ですが、入所した全員がボートレーサーになれるわけではありません。訓練中の素行や成績によっては卒業できずに去る養成員も多いのです。
卒業率は期ごとにこんな感じ。

養成期	入所人数	卒業人数	卒業率
116	37	26	70.3%
117	40	29	72.5%
118	36	23	63.9%
119	36	26	72.2%
120	35	25	71.4%
121	34	25	73.5%
122	50	25	50.0%
123	52	23	44.2%
124	52	25	48.1%
125	51	28	54.9%
126	52	25	48.1%
127	52	27	51.9%
128	51	28	54.9%

スポーツ推薦の選手なら運動神経もいいでしょうし、体育会系の根性があるから卒業率が高いのかというと、実はそう言い切れるのかはわかりません。
人数が少ないため、卒業率だけで多い、少ないとは言い切れませんが、少なくともスポーツ推薦でも卒業できない養成員もいるのです。

養成期	全入所者	うちスポーツ推薦	うち卒業者	スポ推卒業率
116	37	4	2	50.0%
117	40	6	6	100.0%
118	36	8	6	75.0%
119	36	7	4	57.1%
120	35	8	5	62.5%
121	34
122	50	2	2	100.0%
123	52	3	1	33.3%
124	52	1	1	100.0%
125	51	3	3	100.0%
126	52	1	1	100.0%
127	52	4	2	50.0%
128	51	8	5	62.5%

121期はスポーツ推薦制度がなかったのか、該当者がいなかったのか、記載されてないだけなのかわかりませんが情報がありませんでした。

養成所に入所して卒業できない人はどうなるの？

ボートレーサー養成所の入所試験は落ちても何度か受けることができます。（受験回数や年齢の制限はあります）

そのため、何回目かの受験で受かった、という選手もたくさんいるようです。

ですが、一度合格し、入所してから卒業できない場合は再受験はできません。
応募資格に以下の一文があります。

禁錮以上の刑に処せられた者及びモーターボート競走法に違反して罰金以上の刑に処せられた者、選手養成訓練中に成績不良又は素行不良により養成を取りやめられた者、反社会的勢力との関係が疑われる等モーターボート競走の公正を害するおそれがあると認められるに足りる相当の理由のある者のいずれにも該当しない者

ボートレーサー養成所

過去の入所者を調べてみると、ボートレーサーの親族であっても卒業できずにボートレーサーになる可能性を絶たれている方がこの13年（116期～128期）で15人ほどいました。

今回調べてみて、普段名前をよく見る選手の兄弟や子が入所しても卒業していない、という事実を見つけて、なかなか残酷だなと思いました。

実際に活躍しているのか？スポーツ推薦出身の選手たち

117期以降でスポーツ推薦出身の選手は以下となります。

養成期	登録番号	氏名	2021後期等級	競技
116	4886	入海馨	A1	野球
116	4874	池田奈津美	B1	サッカー
117	4908	上田龍星	A1	BMX
117	4900	中田夕貴	A2	エアロビック
117	4888	金児隆太	A2	バイク
117	4902	山川雄大	B1	野球
117	4913	清水さくら	B1	乗馬
117	4887	富澤祐作	B1	体操
118	4938	小芦るり華	A2	フェンシング
118	4934	佐々木翔斗	A2	野球
118	4917	岩橋裕馬	B1	ボクシング
118	4924	中北涼	B2	スノーボード
118	4923	末武里奈子	B2	ソフトテニス
118	4936	戸敷晃美	B2	テコンドー
119	4956	齊藤大将	B2	野球
119	4957	竹之内極	B1	レスリング
119	4955	福田慶尚	B1	野球
119	4964	土屋南	B2	ハンドボール
120	4991	宗行治哉	B1	ボート
120	4974	安井瑞紀	B1	走り幅跳び
120	4987	島倉都	B1	カヌー
120	5007	近藤雄一郎	B2	自転車
120	4990	田中博子	B1	陸上
122	5045	平川香織	B1	フィギアスケート
122	5021	計盛光	B1	シンクロナイズドスイミング
123	5047	國分将太郎	B1	ジェットスキー
124	5088	高憧四季	B1	サッカー
125	5095	小原聡将	B1	ジェットスキー
125	5105	富田恕生	B1	体操
125	5097	東本千佳	引退？	カヌー
126	5146	野田彩加	B2	空手
127	5167	小川竜太朗	B2	硬式野球
127	5151	山下奈緒	B2	柔道
128	5196	鰐部太空海	B2	剣道
128	5178	成貞琳平	B2	自転車
128	5186	遠藤圭吾	B2	野球
128	5184	飯塚響	B2	陸上
128	5182	宮崎安奈	B2	バスケットボール

太字が注目選手です。
若い選手が多いのでまだまだこれから伸びる可能性は大ですが、やはり既に頭角を現している選手と、そうでない選手がいるので一概に「スポーツ推薦なら期待できる」とは言い切れなさそうです。

ただ、上田龍星選手など既にSG級の選手もいるので、「スポーツ推薦選手は活躍できない」ということもなさそうです。

本人の適正と養成所に入所してからの努力などボートレーサーとして成長するにはたくさんの要因があるんでしょうね。

ちなみに、2021年のボートレースのCMは養成員2人を主人公にしたストーリーですが、さすがにCMだから2人とも無事に卒業してレーサーになるまでが描かれるんだろうなと思います。
ただ、以前テレビ番組で女子の養成員2人に取材をしていて、数か月後に再度取材したら、そのうち1人は成績不良で退所していた、というのを見たことがあります。

今活躍している現役レーサーたちはみな厳しい世界を乗り越えてきた結果なのだと改めて思います。

スポーツ推薦選手についてはデータ量が少なく、統計的に何か見出せそうにないので今日はここまで。